乳酸菌の種類と効果|乳酸菌を含む食品は?種類と効果を徹底比較

記事の監修
管理栄養士
安藤ゆりえ
老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。

管理栄養士:安藤ゆりえ

腸の健康が全身の健康にとって重要であると言われる昨今。 「乳酸菌がいい!」とあちこちで耳にするものの、「ビフィズス菌」「ガゼリ菌」「アシドフィルス菌」などなど……種類が多くて何がいいんだか?よく分からなくなってきませんか?? 乳酸菌は種類によって効果が違うと言われています。ヨーグルトやキムチ、ぬか漬けなど、身近な食品に含まれる乳酸菌の種類も気になりますよね。

それでは、さまざまな乳酸菌の種類とその効果や特徴について見ていきましょう。

もくじ

乳酸菌とは

「乳酸菌(lactic acid bacteria)」とは、糖類などの炭水化物を発酵させて大量の乳酸を生産する菌の総称です。

「乳酸菌」の定義としては、「カタラーゼ陰性である(酸素を使わずにエネルギーを得ている)」ことや「消費した糖から50%以上の割合で乳酸を生成する」など6つの特徴が挙げられています。

一口に「乳酸菌」と呼ばれていても、形態から住んでいる場所、エサにするものや塩への耐性、生み出す香りや味わい、生成する物質まで、その特徴は菌種や株によってさまざま。その中で、人の生活に有用な株が古来より食品の保存や食味を上げるために利用されてきました。

現在では、それぞれの株の人体への効果が検証され、プロバイオティクスとしての保健効果が研究・報告されるようになっています。

乳酸菌の種類・分類

乳酸菌の名称は、「属・種・株」の順に表記されます。たとえば「ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株」であれば、ラクトバチルス属カゼイ種のシロタ株ということです。

公益財団法人腸内細菌学会によれば、同一の「種」であれば乳酸菌の基本的な性質や遺伝子情報はほとんど変わりません。一方、健康効果については「株」によって大きな差があるのだそうです。 ヒトの遺伝子も99.9%は他の人と同じだといわれますが、ひとりひとりの能力は大きく異なりますよね。 乳酸菌は現在380種以上の種類に分類されていますが、株まで含めるとさらに多種多様。 乳酸菌を選ぶ際は、「ブルガリア菌」「ガセリ菌」といった種だけでなく、菌株まで含めてその効果を調べると良いでしょう。

動物性乳酸菌と植物性乳酸菌

乳酸菌の説明で、「動物性乳酸菌」「植物性乳酸菌」という言葉が使われることがあります。

「植物性乳酸菌」は植物質のものに生育し、ブドウ糖やショ糖などさまざまなものをエサにすることができ、塩分には強く、腸まで生きて届きやすいー一般的にはそう言われていますが、そのような分類法は科学的には正しいとはいえないとする意見もあります。

たとえば魚醤や塩辛に住んでいる菌が味噌・醤油に生育する菌と同じ菌種であるということもあるそうです。植物からも動物からも分離される菌について、公益財団法人腸内細菌学会では、「(分離源によって)微生物学的性質の違いはありません」としています。

乳酸菌を選ぶときは、「動物性か、植物性か」よりも、それぞれの菌種・菌株の特徴に注目した方がよさそうです。

乳酸菌関連商品は、前述のように百花繚乱の状態である。商品間の競争も厳しくなっている。そうであれば、どうしても差別化が重要になる。早い時期から、このことを意識されていたのが、東京農業大学・生物応用化学科の名誉教授岡田早苗氏である。それが、「植物性乳酸菌」である。漬物やキムチ、みそ・醬油といった植物質に生育する乳酸菌を指すという。一般的な乳製品に生育する動物性乳酸菌に対する呼称である。

参考文献:横山勉「植物性乳酸菌を考える」,JAS情報,2017.より引用”

植物由来の乳酸菌

食事だけで乳酸菌を摂るのが難しい方や忙しい方、好き嫌いの多いお子様、食の細いご高齢の方などにもおすすめです。

主な乳酸菌一覧ー乳酸菌の種類と効果・効能

多種多様な菌種や株が存在する乳酸菌。その中で、人の生活にかかわりが深い乳酸菌の菌名と含まれている食品、主な効果効能を以下にまとめてみました。

乳酸菌が多く含まれている食品としてよく知られているキムチやヨーグルトなどにも、1種類ではなく、数種類の乳酸菌が共生しているのが分かります。

Leuconostoc mesenteroides (ロイコノストック・メセンテロイデス)

キムチ、すんき漬け、豆乳ヨーグルトなど
・腸内環境改善、抗肥満効果(NTM048株) https://www.nitto-pharma.co.jp/news/679/

・血中中性脂肪低減(R037株) https://www.kaneka.co.jp/service/news/n20120619/

Pediococcus acidilactici (ペディオコッカス・アシディラクティシ)

ぬか床、発酵乳など
・IgA産生増強(K15株) https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2018/pr20180315/pr20180315.htm

Lactobacillus plantarum (ラクトバチルス・プランタルム)

すぐき漬け、キムチ、ピクルス、鮒ずし、ワイン、サワードウ、豆乳ヨーグルトなど
・免疫賦活、歯周病改善効果(HK L-137株) https://health.housefoods.jp/hk-l-137/exp_kenkyu_8.html

Lactobacillus brevis (ラクトバチルス・ブレビス)

すぐき漬け、キムチ、きゅうり古漬けなど
・腸内菌叢改善、不安改善効果(KB290株) https://www.kagome.co.jp/company/news/2011/000098.html

Lactobacillus delbrueckii (ラクトバチルス・デルブルエッキイ)

ヨーグルト、チーズなど
・風邪予防効果(1073R-1株) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/24/1/24_10/_pdf/-char/ja
・風邪予防効果(ST9618株) https://www.itoen.co.jp/news/detail/id=24439

Streptococcus thermophilus (ストレプトコッカス・サーモフィルス)

ヨーグルト、チーズ、豆乳ヨーグルトなど
・便秘改善、皮膚機能改善効果(1131株) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/22/1/22_1_1/_pdf

Lactobacillus casei (ラクトバチルス・カゼイ)

ヨーグルト、チーズ、サワードウなど
・免疫調節、アレルギー抑制効果(シロタ株) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/21/2/21_2_107/_pdf/-char/ja

Lactococcus lactis (ラクトコッカス・ラクチス)

チーズ、サワークリーム、発酵バターなど
・肌の免疫力・バリア機能増強効果(JCM 5805株) https://www.kirin.co.jp/company/news/2018/0323_01.html

Tetragenococcus halophilus (テトラジェノコッカス・ハロフィルス)

醤油、味噌、魚醤、塩辛など
・抗アレルギー効果(MN45株) https://www.marukome.co.jp/rd/result10/

上の表の「期待される効果」はほんの一例。ひとつの株にさまざまな効果が認められているものもありますし、ここに書かれていない株もたくさんあります。乳酸菌の株は無数にあるので、今後の実験によって明らかになっていく菌株や保健効果も多いでしょう。

多くの発酵食品には、複数の乳酸菌が含まれています。 李宗勲(2009)「韓国キムチにおける乳酸菌研究の進展」によれば、キムチには低温発酵と中温発酵で異なる菌種の乳酸菌が優勢になることがわかっており、発酵初期、発酵中期、発酵後期と時期が移り変わるにつれ、優勢な菌や検出される菌も変化していくそうです。

キムチの発酵初期にはLeuconostoc属が、発酵中期以降には、Lactobacillus属が優勢になることが報告された。とくに、発酵初期のLeuconostoc属はほとんどがLeuc.mesenteroidesであり、キムチの風味に強く関与していると考えられ、また発酵中期以降のLactobacillus属がはほとんどがLb.plantarumであり、過発酵に伴うキムチの酸味に関与していると報告された

参考文献:李宗勲「韓国キムチにおける乳酸菌研究の進展」,Milk Science Vol.58,2009.”


一般的な発酵食品内の乳酸菌は、種類も数も一定ではありません。商品によっても菌種・菌株が異なるため、「キムチにはこの菌が含まれ、この効果」「ぬか漬けにはこの菌が含まれてこの効果」とはなかなか言えないのが現状です。 食品には多種類の乳酸菌が含まれ、人類の長い歴史の中でその健康効果が実感されていますが、特定の効果を求めるのであれば、菌種・効果がはっきりした商品や、サプリメントなどを摂取するといいでしょう。

発酵漬物は主に乳酸菌の発酵作用によって製造される漬物であるが、発酵過程で出現する主な乳酸菌の種類と特徴を表1に示した。形状から乳酸球菌と乳酸桿菌に分かれ乳酸球菌にはラクトコッカス属、乳酸桿菌にはラクトバチルス属菌がある。

参考文献:宮尾茂雄「漬物と微生物」,モダンメディア61巻”

ヨーグルト、乳酸菌飲料に使われる主な乳酸菌の種類

FAOおよびWHOによって設置されたコーデックス委員会が定めた国際規格では、ブルガリア菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)とサーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)によって乳酸発酵されたものをヨーグルトと定義しています。

日本の規格では乳酸菌の種類については特に定められていませんが、ブルガリア菌かサ―モフィルス菌に、ガセリ菌やカゼイ菌、ビフィズス菌などを添加して作られたものが多いようです。

以下に、日本で発酵乳製品(ヨーグルトや乳酸菌飲料など)に使用されている菌株とその特徴と効果をまとめてみました。

L. casei (ラクトバチルス・カゼイ)

シロタ
・生きたまま腸に届く
・整腸作用、免疫維持作用、ストレス性睡眠障害の改善、膀胱がん再発防止作用などが報告されている

LC1
・腸壁への吸着力が強い
・病原菌の腸壁への吸着を阻止する作用、免疫維持作用、ピロリ菌抑制作用、腸内細菌由来発がん物質関連酵素の低下

L. rhamnosus (ラクトバチルス・ラムノサス)

GG
・胃酸、胆汁に強い
・寿命延長効果、抗腫瘍作用が期待
・免疫維持作用、腸内環境改善作用、乳児のアトピー発現抑制効果

L. delbrueckii subsp. bulgaricus (ラクトバチルス・ブルガリクス)

LB91
・整腸作用に優れている

ガセリーSP
・大腸内での定着性が高い
・腸内環境改善効果に優れる

L. gasseri (ラクトバチルス・ガセリ)

LG21
・胃粘膜の改善
・胃潰瘍・胃がんの原因のひとつであるピロリ菌抑制に効果

B. lactis (ビフィドバクテリウム・ラクティス)

FK12、LKM512、Bb-12
・耐酸性、耐胆汁性がある
・大腸で腸内環境改善効果を発揮

B. breve (ビフィドバクテリウム・ブレーベ)

ヤクルト・ビフィズス
・日本での臨床試験で医学的に整腸作用が認められている
・大腸のただれを緩和、潰瘍性大腸炎の症状軽減効果

L. helveticus (ラクトバチルス・ヘルベティカス)

Ck32
・善玉菌を増加、悪玉菌を減少

B. animalis (ビフィドバクテリウム・アニマリス)

BIO
・食物の腸管通過時間を短縮する作用

このようにそれぞれに特徴をもっている菌株ですが、辨野義己『補完・代替医療プロバイオティクス』(金芳堂)によれば、腸内細菌には個人によって特有の構成があるそうです。

シロタ株を投与した時に腸内のビフィズス菌が増加する被験者と、全く影響を受けない被験者とがいるという実験結果もあり、ヨーグルトをはじめとする乳酸菌を選ぶ際には個人の腸との相性が重要であると考えられます。

腸との相性は実際に自分の身体で試してみるほかないため、ヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリメントなどを試す際は2週間ほど続けてみて、効果が実感できるかどうかを確認してみましょう。

乳酸菌飲料の選び方

ヨーグルトよりも手軽で、子どもでも毎日続けやすいと人気の乳酸菌飲料。 「色んな種類があって迷ってしまう」という方、乳酸菌飲料を選ぶポイントは3つです!

1.菌株チェック

まずは乳酸菌飲料に使用されている菌株をチェック! 科学的に証明された効果や、実験結果から期待される効果などを確認して、希望する効果をもつ乳酸菌飲料を選びましょう。

2.乳酸菌の数

どの程度の数の乳酸菌を摂取すれば健康効果が得られるのかについては、はっきりとした研究はありません。

光岡知足『健康長寿のための食生活』(岩波アクティブ新書)によると、「プロバイオティクスを乳酸菌の生菌剤として摂るときは、一回に10億個以上摂ることをお勧めします」とのことですが、「ビフィズス菌を1日に2000億~3000億個投与することで潰瘍性大腸菌の緩和効果が見られた」といったデータもあり、乳酸菌でも同様に高濃度で投与することでのみ得られる効果もあるようです。

また、病気の治療のために抗生物質を摂る時には、乳酸菌を普段の2倍の量摂ることによって、抗生物質による副作用をある程度緩和してくれるとのこと。菌種だけでなく、商品に含まれる乳酸菌の数も乳酸菌飲料を選ぶ際のポイントになりそうです。

3.糖分は控えめに

乳酸菌飲料を飲むときに気になるのが糖分の摂取量。甘〜い商品が多いと思います。砂糖の取りすぎは腸内環境を悪化させてしまうことがあります。

甘味にどんな糖が使われているかもチェックポイントです。オリゴ糖は、乳酸菌などのエサになる糖として知られています。

糖分を控えているという方は、乳酸菌飲料ではなく糖類無添加のサプリメントを試してみるのもおすすめですよ。

管理栄養士からのコメント

ヨーグルトやキムチなどにはLG21やガゼリ菌、ビフィズスなど様々な種類の乳酸菌の名前が付いており、どれが良いか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

乳酸菌は腸内環境を整えることはよく知られていますが、乳酸菌の中でも菌の種類によって効果的もさまざまです。 乳酸菌の効果から商品を選び、本当に効果があるか同じ商品を2週間食べ続けて、得たい効果を実感できるか楽しみながら試してみると良いですね。

また、毎日食べ続けるものだからこそ乳酸菌以外の成分にも目を向けることも大切です。 過剰な砂糖や人工甘味料の種類によっては腸内環境に悪影響を与えることもあるので、成分表示も確認してみましょう。

管理栄養士:安藤ゆりえ

管理栄養士プロフィール

安藤 ゆりえ

公式サイト

老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。
2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。
また「食を見直すならまずは毎日使う調味料から」をコンセプトに地元愛知県三河のみりんや味噌などの伝統的な調味料の素晴らしさを伝えるセミナーなども開催。

食や栄養に関すること全般ですが特に
・調味料について(みりん、味噌や醤油などの製法やどんなものを選ぶと良いかなど)
・体に優しいスイーツの選び方、作り方
・ダイエットレシピの考案
・時短レシピの考案を得意としています。

乳酸菌の種類についてのQ&A

ビフィズス菌と乳酸菌は何が違うのですか?

ビフィズス菌は主に人や動物の腸管に生息しています。酸素があるところでは発育できず、乳酸菌のように多くの発酵食品には含まれていません。

乳酸菌はとりすぎるとどうなりますか?

乳酸菌を摂りすぎると、一部の人は消化器系で何らかの不快感を感じることがあるかもしれません。乳酸菌のサプリメントを摂取する際は、製品の品質や純度を確認し、必要なら医師や栄養士に相談してから摂取することをおすす めします。

痩せる乳酸菌があれば種類を教えてください。

脂肪を減らすといわれている乳酸菌はいくつか存在し、主なものに「ガセリ菌SBT2055株」や「ラクトバチルス・アミロボラス乳酸菌CP1563株」などがあります。

日本酒に使われる乳酸菌の種類は?

雑菌を淘汰する目的で日本酒に乳酸菌をとり入れる製造方法を「生酛造り」といいます。 「生酛造り」に関与する乳酸菌は、主にLeuconostoc mesenteroidesとLactobacillus sakeiの2種類だそうです。これらの乳酸菌は、自身が生成した乳酸により死滅するため、できあがった日本酒には含まれていません。

摂取する乳酸菌の種類が多いと腸の中でケンカするのでは?

善玉菌同士は、酸性の環境を好む仲間です。エサを取り合って競合することはあっても、互いに悪影響を与えて数を減らしてしまうことはありません。

どんな種類の乳酸菌を選ぶべきでしょうか?たくさんあって迷います。

科学的に証明された効果も参考になりますが、自分の身体との相性がよいかどうかは試してみるまでわかりません。まずは2週間摂取し続けて、自分の身体との相性を試してみましょう。

ロイテリ菌とは何ですか?

ロイテリ菌とは、哺乳類の母乳などに存在する乳酸菌のひとつで、胃酸などに強く、生きて腸まで届く乳酸菌です。元来人間の体に存在する菌なので、安心して摂取していただける菌だと言えるのではないでしょうか。

プラズマ乳酸菌とは何ですか?

プラズマ乳酸菌は、理化学研究所が保有する菌株バンクより発見された菌です。プラズマ乳酸菌は免疫細胞に働きかけているという研究結果もあるようです。

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この記事を書いた人

商品ページ・コンテンツ担当。1児の母。イヤイヤ期まっ盛りの息子の子育てに奮闘中。趣味はヨガとおいしいラーメン屋めぐり。鶏皮が苦手。

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