てんさい糖は体に悪い?カロリーや糖尿病に対する効果も検証しました



記事の監修

この記事は管理栄養士の方に監修していただいています

管理栄養士

亀崎智子

亀崎.智子(かめざきさとこ)管理栄養士・マスターファスティングコンシェルジュ「食べ方」と「出し方」をお伝えするかめごはんの料理教室を主宰。

てんさい糖

身体にやさしいと言われる「てんさい糖(甜菜糖)」。
てんさい糖にはオリゴ糖が含まれているので、お腹の調子を整えたい方にも人気の甘味料です。
今回はそんなてんさい糖について、とことん調べてみました。

てんさい糖とは

てんさい糖とは

てんさい糖の原料となる甜菜(テンサイ)は、ヒユ科アカザ亜科の二年草。
シュガービートとも呼ばれ、ボルシチなどに使われる赤い「ビーツ」とは仲間にあたります。

元々はドイツで生まれた作物で、産地はヨーロッパが中心。
日本国内では北海道だけで生産されています。

砂糖大根(サトウダイコン)とも呼ばれますが、アブラナ科の大根とは太った根が似ているだけで全く別の植物。
生で食品として使われることはほとんどありません。

甜菜は、光合成で作った糖分を根に蓄えます。
その根を細かく切り、お湯につけて糖分を抽出、繊維やタンパクなどを除いて作られるのがてんさい糖です。

甜菜から作られる砂糖には精製された白い「グラニュー糖」や「上白糖」もありますが、一般的には甜菜の蜜を含んだ「てんさい含蜜糖」が「てんさい糖」と呼ばれています。

てんさい糖の成分

てんさい糖にはどのような成分が含まれているのでしょうか?
下の図は、てんさい糖と上白糖の栄養成分表です。

栄養成分表示(100gあたり)
栄養成分 てんさい糖 上白糖
エネルギー (kcal) 382 384
たんぱく質 (g) 0.5 0
脂質 (g) 0 0
炭水化物 (g) 97.5 99.2
ナトリウム (mg) 32~78 1
カルシウム (mg) 0~2 1
カリウム (mg) 6~55 2
マグネシウム (mg) 0~0.2 3~20
リン (mg) 0~6 0
(mg) 0~0.2 0
(mg) 0 0
亜鉛 (mg) 0~0.1 0
オリゴ糖 (mg) 5 0

(出典:ホクレンWebサイト日本食品標準成分表2015年より作成)

カロリーは上白糖とほとんど変わりませんが、てんさい糖には天然のオリゴ糖やミネラルが含まれていることがわかります。糖以外にも原料の甜菜に含まれる成分を多く含むてんさい糖は、土壌や天候によって成分が変化します。

茶色い色のひみつ-てんさい糖の製造工程

製造工程

てんさい糖といえば「茶色いお砂糖」。

「着色しているのでは?」「焦げた色」など色々なことが言われていますが、てんさい糖の茶色は糖蜜の色です。

てんさい糖は次のような工程で作られています。

  • 1. 甜菜を刻んで湯につけ、糖分を浸出させる
  • 2. 1をろ過して煮詰め、白下(しろした:砂糖の結晶と糖蜜が混じったもの)をつくる
  • 3. 白下を遠心分離機にかけ、砂糖の結晶を分離させる 【→グラニュー糖など】
  • 4. 残った糖蜜を乾燥させる 【→てんさい糖】

てんさい糖はグラニュー糖などの純度の高い結晶と違い、糖蜜を乾燥させて作っているので着色したりわざと焦がしたりしているわけではありません。

甜菜から作られる砂糖には精製された「グラニュー糖」や「上白糖」もあります。
しかし一般的には甜菜の蜜を含んだ「てんさい含蜜糖」が「てんさい糖」と呼ばれているので「てんさい糖=茶色」というイメージがあるのです。

他の砂糖とどう違うの?

「てんさい糖を使ってみようかな?」という時に一番気になるのが、他の砂糖との違い。

そこで、主な砂糖の種類と特徴を比べてみました。

原料の名前で呼ばれたり、作り方で呼ばれたりとわかりづらい砂糖の種類ですが、大きく分けると「蜜を含んでいる砂糖」と「蜜を分離させて作られる砂糖」に分けられます。

蜜を含んでいる砂糖

含蜜糖

糖液からショ糖の結晶だけを取り出すのではなく、蜜を含んだ状態で乾燥させた砂糖です。原料由来の様々な成分を含みます。

・黒糖
サトウキビの搾り汁をそのまま煮詰めたもので、見た目は茶褐色。
独特の濃厚な味わいと風味があり、ミネラルが豊富です。わずかにビタミンも含みます。
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・きび砂糖
サトウキビの搾り汁からある程度の成分を除いた糖液を煮詰めて作られるもので、見た目は薄い茶色。
風味が豊かでまろやかな味わいです。
黒砂糖ほどではありませんがミネラルを含みます。

・てんさい糖
前項で見てきたように甜菜の糖蜜を乾燥させて作ります。見た目は薄い茶色。
ミネラルも含み、やさしい甘さとまろやかな味わいが特徴です。
オリゴ糖を5%含み、お腹にやさしいといわれています。

蜜を分離させて作られる砂糖

分蜜糖

糖液からショ糖の結晶を取り出して作られた砂糖です。

原料やメーカーによって微妙な差はありますが、原料がサトウキビでも甜菜でもほぼ同じ性質のものができます。

・グラニュー糖
最も純度が高い結晶です。色は無色透明(白)。結晶が大きく、サラサラとしています。
すっきりとした甘さで、コーヒーシュガーやお菓子などの食品に使われます。

・上白糖
結晶が細かくしっとりとした砂糖。転化糖(ブドウ糖と果糖の混合物)をかけて作られ、色は無色透明(白)。
甘みが強く、料理に多く使われます。

・三温糖(さんおんとう)
グラニュー糖や上白糖を取り出した後の糖蜜から作られる砂糖。色は薄い茶色です。
この色は、煮詰め、結晶を取り出す工程でついたカラメル色で、蜜の色である黒糖やきび砂糖、てんさい糖とは異なります。
甘みが強く、コクがあるといわれ、和食に多く使われます。

てんさい糖最大の特徴・オリゴ糖

オリゴ糖

てんさい糖の特徴は「やさしい甘さ」「コク」「ミネラル」「オリゴ糖」。
中でも、てんさい糖だけの大きな特徴は「オリゴ糖を含んでいる」ということです。

オリゴ糖とは、ブドウ糖などの「単糖」が数個繋がったものの総称。
食品では、大豆やゴボウ、アスパラガスなどに多く含まれているといわれています。

「フラクトオリゴ糖」「ガラクトオリゴ糖」「イソマルトオリゴ糖」などたくさんの種類がありますが、てんさい糖に含まれているのは「ラフィノース」「ケストース」というオリゴ糖です。

どちらも、ビフィズス菌など腸内の善玉菌の栄養源になる成分。
てんさい糖にはこのオリゴ糖が5%以上含まれています。

メーカーサイトによると、ボトルで販売されている「オリゴシロップ」に含まれるオリゴ糖が7.6~12%ですから、粉末の砂糖でもその約半分は含まれているということになります。

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てんさい糖が「身体にやさしい」と言われる理由

「身体にやさしい」と言われるてんさい糖。
実際にはどのような効果があるのでしょうか?

ここでは、てんさい糖に含まれているラフィノース、ケストースといったオリゴ糖の効能をご紹介します。

効果1 ビフィズス菌を増やす

ビフィズス菌を増やす

胃や小腸で吸収されず、大腸まで届くオリゴ糖。

てんさい糖に含まれるラフィノースは、腸内細菌の中でも特にビフィズス菌の栄養源となり、大腸菌やウェルシュ菌などの悪玉菌の増殖を抑制。

ビフィズス菌優勢の腸内バランスにしていくといわれています。

効果2 便秘改善

便秘改善

ビフィズス菌が増えることによる整腸作用で、便秘や下痢などを改善します。

お通じが整うと新陳代謝もよくなり、肌がきれいになったり、口臭や腰痛の改善につながったりすることも。

効果3 免疫力アップ

免疫力アップ

ラフィノースはビフィズス菌を増やし、リンパ球・好中球といった免疫細胞の増殖や能力アップを促すことがわかっています。

ビフィズス菌には免疫力アップのほかにも抗がん作用、ウイルス感染防御作用など、さまざまな効果が研究されています。

効果4 アトピー性皮膚炎改善

アトピー性皮膚炎改善

てんさい糖に含まれるラフィノースは、アトピー性皮膚炎の症状を改善させるといわれています。

アトピー症状の発現にはカンジダという菌が関係しているとされますが、ラフィノースはこのカンジダを抑える効果があることがわかっています。

あくまでも「他の砂糖と置き換える」つもりで

他の砂糖と置き換える

様々な効果をもつオリゴ糖ですが、できれば食事から摂取するのが理想。砂糖をたくさん摂取すれば摂取するほど良いわけではありません。

「お腹にやさしいからたっぷり摂ろう!」と過剰に摂っていると不調の原因になりますので注意が必要です。

特に、アトピー性皮膚炎に関係するカンジダ菌は砂糖を好むといわれていますので、治療目的でてんさい糖を大量に摂取するのは絶対におすすめできません。

「身体にやさしい」というのは、あくまでも他の砂糖と比較した場合の話。
「他の砂糖をてんさい糖に置き換える」というつもりで、使用は適量を心がけてください。

てんさい糖は糖尿病の人におすすめ?!

糖尿病の人におすすめ?!

てんさい糖について書いてあるWebサイトを見てみると、「血糖値の上昇がゆるやか」「糖尿病によい」などといった情報も書かれています。
本当でしょうか?

リサーチの結果、「てんさい糖は摂取後の血糖値の上昇がゆるやかである」「てんさい糖が糖尿病によい」といった信頼できるデータは確認できませんでした。

確かにてんさい糖に含まれているオリゴ糖は難消化性で、ヒトの小腸で吸収されないため血糖値を上げづらく、上白糖やグラニュー糖と比較すれば血糖値の上昇がゆるやかであると考えられます。

といっても、オリゴ糖が占めるのはてんさい糖の成分の5%。

ショ糖が大部分を占めることは他の砂糖と変わりません。
糖尿病の治療をしている方や砂糖を控えている方が「てんさい糖なら摂っても大丈夫!」というわけではありませんので、注意してください。

てんさい糖のGI値は、他の砂糖よりも低い?

他の砂糖よりもGI値が低い?

てんさい糖が「血糖値の上昇がゆるやか」だと言われている理由について、てんさい糖のGI値も関係しているようです。

GIとは食後血糖値の上昇を示す指標です。
食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖濃度を計ったものです。

つまり食事をし摂取したものは体内で「糖」になり血液中を流れます。
その食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを計ったものがGI値になります。

このGI値が低ければ、過体重、肥満、2型糖尿病の発症リスクを低減させる可能性があると言われています。

では砂糖のGI値はというと

砂糖の種類 てんさい糖 グラニュー糖 白砂糖 三温糖 黒糖
GI値 65 110 109 108 99

となっており、てんさい糖は砂糖の中ではGI値が低いことが分かります。
少しでも血糖値の上昇を抑えたい方は普段お使いの砂糖をてんさい糖に変えてみても良いのかもしれません。

しかし砂糖ということには変わりありませんので、食べすぎには注意が必要です。

糖尿病の方や気になる症状がある方は、必ず医師の指示やアドバイスに従ってください。

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砂糖は身体によくない?

「砂糖は身体に有害である」という話を目にしたことはありますか?

「白砂糖は害がある」「いやいや、黒砂糖も害がある」「てんさい糖も体に悪い」「体にいい砂糖はあるの?」

砂糖については情報があふれていて、何を信じていいのかわからなくなってしまいます。
一体砂糖の何が悪くて、どうすればいいのでしょうか?

砂糖を大量に摂取するとどうなる?

砂糖の害については、2015年にWHOが「成人及び子どものための糖類の摂取に関するガイドライン」を発表。

糖類の過剰摂取が肥満や虫歯などの症状の原因となるとし、1日の摂取量を総エネルギー摂取量の10%(できれば5%)未満に減らすことを推奨しています。

また、カリフォルニア大学の科学者チームによって開設されたサイト”Sugar Science”には、糖の過剰摂取と心臓病や糖尿病との関連や、糖が中毒性をもつことなどが示されています。

はっきりと証明されたとはいえませんが、糖の過剰摂取とがんやアルツハイマー病、老化症状との関連についても研究されているようです。

どんなものでも過剰摂取は問題ですが、糖分も摂りすぎは身体に有害ですし、それは白砂糖であっても黒砂糖であってもてんさい糖であっても変わりありません。

砂糖とうまくつきあうために

砂糖とうまくつきあう

一方で、糖は脳内で「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの濃度を高める作用もあります。

震災時に役に立ったものとして「甘いもの」が挙げられることがありますが、ストレスにさらされた時に心をホッとさせる効果があるのはよく知られていますよね。

甘いものを食べて「おいしい」「幸せだな」と感じるのは自然なことですし、全く摂らずに生活するのは難しいもの。

砂糖を摂取するときは、次のようなことに気をつけてみてください。

  • 1. 食事の栄養バランスを考えて適量を摂取する
  • 2. 食物繊維と一緒に摂取することで、血糖値の上昇を緩やかに
  • 3. 日中の活動時間中に摂取することで、血糖値の上昇を緩やかに
  • 4. 血糖値・インスリン濃度の急激な上昇を招く清涼飲料水に注意する
  • 5. 精製度が低い砂糖(黒糖、てんさい糖など)を選んで、ショ糖以外の栄養素も摂取

摂りすぎないこと、摂るときは少しでも健康にプラスになるように工夫してみることで、砂糖とうまく付き合っていきましょう。

てんさい糖についてのQ&A

てんさい糖のカロリーは?
てんさい糖は382カロリー(100gあたり)です。カロリーは上白糖とほとんど変わりませんが、てんさい糖には天然のオリゴ糖やミネラルが含まれています。
てんさい糖は体にいいですか?
てんさい糖に含まれているラフィノース、ケストースといったオリゴ糖には、腸内細菌の中でも特にビフィズス菌の栄養源となり、大腸菌やウェルシュ菌などの悪玉菌の増殖を抑制します。また、便秘や下痢などを改善します。このような効果から考えて、てんさい糖は体にいいと言えます。
てんさい糖と、きび砂糖の違いは?
どちらも、グラニュー糖や上白糖と比べるとミネラルが残っています。
特にきび砂糖はカリウムが多めです。
大きな特徴として、てんさい糖にはオリゴ糖が含まれているので、お腹の調子を整えたい方にはてんさい糖の方がおすすめです。
味は、きび砂糖はコクがある甘さ、てんさい糖は品のある甘さといわれています。
また、てんさい糖の原材料である甜菜は北海道で栽培されているのに対して、きび砂糖の原材料であるサトウキビは沖縄などの温暖な地域で栽培されています。そのため、同じ糖ではありますが、きび砂糖の方が体を冷やしやすい傾向が強いといわれています。
てんさい糖を使いたいです。普通の砂糖をつかうレシピで食事やお菓子を作る場合、同量のてんさい糖と置き換えてつくれますか?
てんさい糖は、上白糖やグラニュー糖と比較するとまろやかな甘みが特徴です。同量で作った場合は少し甘さ控えめに仕上がるので、加減して作ってみてください。
てんさい糖は体にいいと聞きましたが、原料が甜菜なら上白糖やグラニュー糖でも効果は変わりませんか?
上白糖やグラニュー糖は、ショ糖の結晶を取り出したもので、成分はほとんどショ糖だけです。これは原料が甜菜でもサトウキビでも変わりません。
名称が紛らわしいですが、「てんさい糖」として売られている砂糖と「上白糖(原料:てん菜)」「グラニュー糖(原料:てん菜)」とは別物と考えてください。

●管理栄養士からのコメント

砂糖と一言でいっても、さまざまな種類のものが存在しています。
甜菜を原材料としていてもいわゆるてんさい糖と上白糖・グラニュー糖は別物です。使用用途によって使い分けるのがよいでしょう。

また、人によっては甜菜の栽培時に農薬が使用されているかも気になるところではないでしょうか。残念ながら、日本で栽培されている甜菜で無農薬のものはないとのこと。

海外で栽培されているものの中には、無農薬のものもあるとのことですが、遺伝子組換えされているものもあるので、その際は選ぶ時に注意が必要です。日本ではまだ商用作物に遺伝子組み換え作物はNGなので、その点は心配無用です。

てんさい糖はコクもありまろやかな味付けにおすすめの甘味のひとつです。甘みが少し欲しい時に上手に活用してはいかがでしょうか。

亀崎智子

管理栄養士プロフィール

◎亀崎智子

管理栄養士・マスターファスティングコンシェルジュ「食べ方」と「出し方」をお伝えするかめごはんの料理教室を主宰。(福岡市)
コンビニなどの商品開発業務に従事した経験から、食の大切さに気づく。
現在は4歳双子の男の子を育てながら、ストレスフリーにゆるいナチュラル生活の実践の仕方をお伝えしています。
昔ながら季節の手仕事や発酵食品、オーガニック食品などの取り入れ方が得意です。

▼公式サイト
ブログ:http://kamegohan.com/
Instagarm:kamegohan0528

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この記事を書いた人

コンテンツ、写真撮影担当。暇があったらキッチンで発酵食品や保存食品を作ったり、写真を撮ったりしています。趣味は一人で映画に行くこと。