花粉症に乳酸菌が効く?その効果と仕組み、摂取のポイントとは

記事の監修

この記事は管理栄養士の方に監修していただいています

管理栄養士

稲尾貴子

管理栄養士として病院や保育園に勤務した経験があります。延べ1万人以上の栄養指導実績があり、得意分野は糖質制限や塩分制限、減量などの栄養サポートです。

花粉症対策に乳酸菌?!

今や国民病ともいわれる花粉症。
辛いくしゃみに鼻づまり、かゆみ…症状が続くと集中力も落ち、勉強や仕事にも大きな影響が出てしまいますよね。

今回は、そんな花粉症対策のひとつとして「乳酸菌」をご紹介します。
どんな仕組みで乳酸菌が花粉症に効くのか? 子どもや妊婦さんにも使えるのか? 気になる情報をまとめました。

腸だけじゃない!乳酸菌の働き

腸だけじゃない!乳酸菌の働き

よく知られているように、乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌」には、腸の中の悪玉菌を抑え、腸内環境を整える働きがあります。

そう言われると「腸の働きを整えて、便秘を解消したりするのでしょう?」と思われる方も多いかもしれませんね。
確かに善玉菌はお腹の調子を整えてくれますが、それだけではありません。

善玉菌には免疫を刺激したり、ビタミンを合成したりする力があります。

さらに、毒素を発生させたり発がん物質を発生させたりする悪玉菌を抑えることによって、さまざまな全身疾患にかかるリスクを下げるのではないかともいわれています。

乳酸菌をはじめとするプロバイオティクス(腸内フローラのバランスを改善することにより生物に有益な作用をもたらす微生物)が人間にもたらす作用については、次のようなものが証明または期待されています。

表1  すでに明らかにされているプロバイオティクスの機能および期待される機能
科学的に証明されている健康表示 ・ロタウイルス下痢症改善作用
・抗生物質誘導下痢症改善作用
・乳糖不耐症軽減作用
・乳児食餌性アレルギー症軽減作用
・整腸作用
ヒト試験が求められる試験研究 ・発がんリスク低減作用
・免疫能調節作用
・アレルギーの低減作用
・血圧降下作用
・胃内ピロリ菌抑制作用
・腸内環境改善作用
・過敏性大腸炎,Crohn病および潰瘍性大腸炎の軽減作用
・Clostridium difficile下痢症の低減作用
・食餌性コレステロールの低減作用
・乳児および児童の呼吸器感染症の抑制作用
・口腔内感染症の低減作用

出典:辨野義己(2015)「プロバイオティクスとその臨床的展望」日本内科学会雑誌 104巻1号

まだ全てが明らかにされているわけではありませんが、乳酸菌は腸だけでなく、全身に健康効果をもたらすのではないかと考えられているのです。

乳酸菌の上手な摂取法とは?

乳酸菌の上手な摂取法とは?「大腸の専門医」後藤利夫先生に聞きました。
腸に良いと聞いたり、従来からある商品に乳酸菌がプラスされて販売されていたり・・・
乳酸菌だけでもさまざまな情報が蔓延しているけれど、実際、体にどう良いんだろう?
今回はそんな疑問を徹底的に解消すべく、大腸の専門医にお話しを伺いました!

乳酸菌の上手な摂取法とは?「大腸の専門医」後藤利夫先生に聞きました。の記事を見る

乳酸菌の種類と効果

乳酸菌の種類と効果
私たちの体を守ってくれる免疫機能が集中している「腸」。
整腸作用の他にも、乳酸菌にはさまざまな効果を発揮することがわかってきました。
今回は、乳酸菌に期待できる効果について詳しく紹介していきます。 乳酸菌の種類と効果の記事を見る

花粉症に効く乳酸菌、その効果と仕組み

乳酸菌とアレルギーに関する研究は多く、花粉症についての実験も何度も行われています。
花粉症が起こる仕組み、乳酸菌が花粉症に効く理由をみていきましょう。

花粉症・アレルギーが起こる仕組み

花粉症に効く乳酸菌、その効果と仕組み

花粉症は、次のような仕組みで発症するといわれています。

1 アレルゲン(花粉)が侵入
2 免疫細胞からアレルギー反応を抑制する「Th1細胞」アレルギー反応を促す「Th2細胞」が作られる
3 アレルギー体質の人はTh2細胞が多く作られる⇒「IgE抗体」が作られる
4 IgE抗体が肥満細胞にくっついて活性化させる⇒ヒスタミンなどの物質が放出される
5 鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどのアレルギー症状が表れる

“参考資料:『花粉症と花粉喘息』日本小児アレルギー学会誌”

花粉症の人と花粉症でない人の違いは、2~3の段階で「Th1細胞」と「Th2細胞」のバランスがとれているかどうかなのだそう。
近年、環境整備により衛生状態が改善されたり、過剰な除菌習慣などが原因で、このバランスが崩れている人が多いことが、花粉症患者の増加につながっているのではないかと指摘されています。

乳酸菌が免疫を整える!

乳酸菌が免疫を整える!

乳酸菌の中には宿主の免疫応答を刺激する作用を有するものがあり,種々の免疫関連疾患に対する改善効果が考えられることから、実用化を目的としてその有用性を検証した。Th1/Th2 バランスを是正する免疫調節活性の高いL. gasseri OLL2809 を選出し、その有効性を評価すると抗原特異的 IgE の抑制効果や好酸球増多に対する抑制効果が認められた。『乳酸菌の免疫調節効果に関する研究』腸内細菌学雑誌より引用”

花粉症の薬として一般的な「抗ヒスタミン薬」は、前掲の表の4~5の段階でヒスタミンの働きを抑える薬です。
一方の乳酸菌が働くのは、ヒスタミンが放出される前の2~3の段階。
「Th1細胞」と「Th2細胞」のバランスを整え、花粉症を引き起こす「IgE抗体」という物質が作られるのを抑える働きがあるそうです。

症状を抑えるだけでなく、そもそものアレルギー反応の元が減らせるなら嬉しいですよね。

また、乳酸菌は、腸から分泌される「IgA抗体」という物質を増やす働きをしていることがわかっています。
この「IgA抗体」にはアレルゲンなどの異物を排除するバリア機能があり、増えることでアレルギーを起こしにくい体質になるそうです。

乳酸菌は、摂り続けることでアレルギーを起こしにくい体質に改善してくれる可能性をもっているのです。

どんな効果が期待できる?

どんな効果が期待できる?

「鼻づまり」及び「鼻のかゆみ」の鼻症状において、OLL2809 群で有意な低下が認められた。これらの結果は、4週後の鼻粘膜所見が低下傾向を示したことと一致しており、さらに血中スギ IgE 抗体価や好酸球,Th1/Th2 バランス等のアレルギー関連指標にも改善が認められた。『乳酸菌の免疫調節効果に関する研究』腸内細菌学雑誌より引用”

これまでの研究では、一部の乳酸菌には次のような花粉症の症状を軽減する効果があることがわかっています。

  • ・鼻炎症状(鼻水・鼻づまり)
  • ・目のかゆみ
  • ・鼻のかゆみ

今までの花粉症の薬は眠気などの副作用もあり、「症状を抑えているだけで根本的な解決になっていない」と感じていた方も多いのではないでしょうか。

乳酸菌は副作用がなく、すでに症状がある方も、症状がないけれど発症を予防したい方も同じように飲むことができるのが特徴。継続して使い続けることもできます
何より、症状を抑えるのではなく「アレルギーを起こしにくい身体に整える」という点に希望が感じられますよね。

暮らしの中に手軽に取り入れられる乳酸菌は、花粉症に悩む方々の救世主となるかもしれません。

花粉症に対しての乳酸菌の効果はまだまだ研究段階

乳酸菌の花粉症に対する花粉症などに対する効果は、研究結果の評価を待つ段階です。医薬品のような安定した効果を期待するには早すぎると伝える記事もあります。

使用頻度が増加しているヨーグルト、乳酸菌剤ですが、一般医療機関を受診しているアレルギー性鼻炎患者さんの調査では、効果ありと判断されている方は30%以下です。『花粉症の民間医療について』厚生労働省サイトより引用”

子どもの花粉症にも乳酸菌が効く?

子どもの花粉症にも乳酸菌が効く?

「子どもにはあまり薬を飲ませたくない…」
そうお考えになる親御さんもいらっしゃるでしょう。

もちろん、深刻なアレルギーの場合は医師の指示に従って薬を摂る必要がありますが、そうでない場合は薬を使わずにコントロールしてあげられたらうれしいですよね。

乳酸菌は、子どものアレルギーにも効果があるとされています。
アトピー性皮膚炎の子どもの腸内には乳酸菌が少ないというデータもあり、8週間乳酸菌を摂取させたら多くの患者でかゆみなどの症状が軽減したという実験結果もあるそうです。

また、妊娠中の母親が乳酸菌を摂取すると、摂取していない母親から生まれた子よりも子どものアレルギー発症が少ないという報告や、授乳中の母親が2種類以上の乳酸菌を摂取することで母乳を飲んだ子どものアレルギー発症率が下がるといった報告もされています。

乳酸菌は、お子さん本人だけでなく、妊婦さんや授乳中のお母さんが摂取することで間接的にお子さんのアレルギー発症を予防できる可能性もあり、妊娠中から産後、離乳後まで長いスパンで活躍してくれそうです。

食事&乳酸菌サプリで花粉症対策

食事やサプリメントで手軽に摂取できる乳酸菌。
花粉症対策におすすめの食材は? おすすめのサプリメントは? 情報をまとめてみました。

乳酸菌が摂れるおすすめ食材

乳酸菌が摂れるおすすめ食材

乳酸菌が摂れる食材には次のようなものがあります。

乳製品 ヨーグルト、ケフィア、ナチュラルチーズなど
漬け物類 ぬか漬け、キムチ、すんき漬け、しば漬け、沢庵、ザワークラウトなど
その他 納豆、味噌、醤油、米麹甘酒など

乳酸菌の含有量は食材よりもサプリメントの方が多いかもしれませんが、発酵食品には多様な菌が含まれているのが特徴です。
よく「動物性乳酸菌」「植物性乳酸菌」と呼ばれますが、どちらがより身体によい、ということはなく、両方摂ることをおすすめします。

また、オリゴ糖食物繊維も腸内の善玉菌を増やすといわれていますので、意識して摂るといいでしょう。

シンバイオティクスとは

シンバイオティクスとは?乳酸菌との関係|かわしま屋コンテンツ
プロバイオティクスとプレバイオティクスの組み合わせであるシンバイオティクス。
今回は実際にどんな食材の組み合わせがシンバイオティクスの考え方になるのかご紹介します。
腸や健康に利益をもたらすお勧めレシピも必見です。

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プロバイオティクスって一体なに?詳しい定義からヨーグルトとの関係まで紹介

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プロバイオティクスの定義から、腸内フローラ・プレバイオティクスとの関係まで、分かりやすく紹介していきます。
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花粉症に効く乳酸菌は?

花粉症に効く乳酸菌は?

一口に乳酸菌といっても、実はたくさんの種類があり、効果も少しずつ違います。
花粉症に有効といわれる乳酸菌の株には「L-92株」「EC-12株」「L-55株」「Sn26株」「シロタ株」といったものがありますが、由来はヨーグルトから分離されたものや日本の「すんき漬け」から見つかったものなどさまざまです。
乳酸菌には、個人の腸との相性があるといわれています。

例えば日本人の腸内細菌叢とアメリカ人の腸内細菌叢のバランスにはそれぞれ特徴があり、さらに同じ日本人でも腸内細菌叢のバランスは人によって異なります。
ある人にとってよく合う株が、自分にとっても合う株とは限らないのだそうです。

サプリメントを使う時はさまざまなものを試し、自分の身体に合うものを見つけることが大切。目安としては2週間、継続して使い続けてみてください。効果があるな、と感じたら、それが相性のよい乳酸菌です。

菌との相性は自分の身体で実験するしかありません。後から振り返れるように、「お試し期間中」は便の状態や気になる症状、身体の調子などをメモしておくといいかもしれませんね。

アレルギー体質とのつきあいは長いもの。乳酸菌も、あせらず時間をかけて自分にぴったりの株を見つけてください!

乳酸菌サプリ|効果・効能と正しいサプリの飲み方とは

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腸内環境を整える「菌活」のひとつである乳酸菌サプリ。
「食事と同じように効くの?」「具体的な効果は?」「副作用はないの?」
今回は、乳酸菌サプリの気になるポイントについてご説明します。 乳酸菌サプリ|効果・効能と正しいサプリの飲み方とはの記事を見る

●管理栄養士からのコメント

ヨーグルトやチーズ、キムチ、ぬか漬けなどの漬物や味噌など、発酵食品には様々な種類の乳酸菌が含まれています。

たくさん種類があるため、何をどう摂ったらいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
乳酸菌は2週間程度摂り続けることで、体調の改善や便通の改善などの効果を実感できるようになります。
また、免疫力を上げるには3か月ぐらいかかるとも言われています。

乳酸菌で腸内環境を整えれば、花粉症やアレルギーの辛い症状を起こしにくい身体に整えることが期待できますので、自分の腸内環境に合う乳酸菌を探してみてはいかがでしょうか。

稲尾 貴子

管理栄養士プロフィール

◎稲尾 貴子

管理栄養士として病院や保育園に勤務した経験があります。延べ1万人以上の栄養指導実績があり、得意分野は糖質制限や塩分制限、減量などの栄養サポートです。パン作りが趣味の2児の母です。食欲旺盛なこども達のためにパンを作り始めたところ、パンの奥深さに魅了されています。

▼公式サイト
https://www.instagram.com/takako.inao/

花粉症と乳酸菌についてのQ&A

花粉症には、乳酸菌とビフィズス菌のどちらが効くのですか?
乳酸菌とビフィズス菌は、どちらも花粉症に効くという実験結果が出ています。
色々試してみて、自分の身体に合う菌を見つけてください。
花粉症を予防・改善するために乳酸菌を飲む時のポイントは?
花粉症予防のために乳酸菌を飲む場合は、花粉が舞うシーズンになる前から飲んでおくことがポイントです。
また、症状が出ている時は飲む、出なくなったら飲まない、というのではなく、継続して飲み続けることも大切です。
乳酸菌は花粉症だけでなくインフルエンザにも効くと聞きました。
免疫を刺激する働きがある乳酸菌。
風邪やインフルエンザなどの予防に有効という実験結果もでています。
花粉症によいといわれる乳酸菌を飲んでも効かない場合は?
乳酸菌にはさまざまな種類があり、ある人に効いたものが他の人には効かないこともあります。
自分の身体と相性のよいものを探してください。
乳酸菌サプリメントは生きて腸に届かないものだと効果がないですか?
乳酸菌のサプリメントは、死菌でも腸内の善玉菌のエサになり、善玉菌を増やす効果があるといわれています。
免疫への影響についても、死菌か生菌かは関係ないようです。

参考文献:
後藤利夫『あなたの知らない乳酸菌力』小学館,2011.
辨野義己「プロバイオティクスとその臨床的展望」日本内科学会雑誌 104巻1号,2015.
指原紀宏「乳酸菌の免疫調節効果に関する研究」『腸内細菌学雑誌』27巻4号,2013.
榎本雅夫ほか「ヨーグルト・乳酸菌飲料摂取によるアレルギーの発症抑制」『アレルギー 』,2006.
「プロバイオティクスの花粉症に対する効果」ヤクルト本社広報室
”The gut microbiome of healthy Japanese and its microbial and functional uniqueness”,DNA Research,2016.

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この記事を書いた人

コンテンツ、写真撮影担当。暇があったらキッチンで発酵食品や保存食品を作ったり、写真を撮ったりしています。趣味は一人で映画に行くこと。