国産の安心な食品を選ぶときの助けとなる「食の3重丸」とは?

「食の3重丸」は、日本産にこだわり信頼できる作り手と生産者をつなぎ、安心で健康に配慮して豊かな食生活の実現と、食料自給率の向上を目指す公益事業です。
作り手でも売り手でもない「第三者的立場」で、一定の基準を満たした食品を「食の3重丸 認定定商品」とし推奨することで、社会・生活者・生産者のためになるのではないかとの考えから2009年よりスタートしました。

営利目的ではなく公益のためのこの活動は、かわしま屋が考える食に対する理念や商品の基準と共感するところが多くありました。
また、既に、かわしま屋でお取り扱いさせていただいている商品のいくつかが認定されています。

この活動の理解を深め、さらに生活者や生産者が活用しやすくなることを願って、理事の阪本博子さんに、設立の経緯や日本の食を守る活動についてお伺いしました。

お話しくださった方/阪本博子さん

阪本博子さん

――「食の3重丸」の活動内容を教えてください。

阪本:

独自に定めた厳しい審査基準をクリアした良質な製品を「食の3重丸 認定製品」として推奨し、社会に広めていく活動です。
この活動は、一般財団法人 雑賀技術研究所が実現する利益追及を目的としない社会貢献活動(公益事業)となっています。

雑賀技術研究所

――般財団法人 雑賀技術研究所 とは、どのような組織ですか?

阪本:

雑賀財団の設立者は、ひたすら「日本の食を支える・社会に役立つ」を目指して、精米・撰穀機器・物流機器・分析機器などを、研究・開発・実用化してきました。
例えば、生活者の皆さんに馴染みがあるものを3つご紹介させてください。
1つは、昭和35年に世界ではじめて「石抜撰穀機」を開発しました。
昔は、お米の中に小石が混ざってしまうことは当たり前のこととされていました。
しかし、多くの方がなくなることを願っていました。
2つは「無洗米」の開発。
米のとぎ汁が海を汚染することのないよう、環境負荷を軽減するためのものです。3つは「金芽米」の開発。
玄米の栄養価と白米の食べやすさを兼ね備えたお米で、健康寿命を延ばすことに貢献します。

――どのように「食の3重丸」の活動がはじまったのでしょうか。

阪本:

10年ほど前ごろから、食品の偽装問題や添加物などの健康への影響など、食品に関わる日本の社会問題が表面化してきました。
また、輸入依存の危険性も問題視されはじめています。そんな人々の食に対する不安を解消し、食料自給率の向上を目指したのが「食の3重丸」のはじまりです。

認定商品の考え方と基準

――認定商品の考え方と基準を教えてください。

阪本:

基本的な考え方は3つあります。

1つは「日本産」であること。原料は100%日本産。
日本国内で製造していること。
これは決して、日本産=安心という考え方からではありません。
農業従事者は高齢化し後継者不足に悩まされています。
しかし一度耕作を辞めてしまった土地は、なかなか農地に戻すことができません。
もし、世界的な食料危機や何らかの経済政策により日本への輸出がストップしたときに、日本国は日本人の食を賄うことが出来るのでしょうか。
未来の子ども達のためにも、日本の食における自給率を上げることはとても大切です。
環境に配慮した作り方をしていることも重要です。

2つは「安心」であること。
食品添加物など不使用。
厳しい残留農薬基準を設けています。
また、環境に配慮した製品であること。
食品添加物は危険なものではないかもしれませんが、なくても良いものは極力使わない考えを持つことです。
添加物の中には、加工助剤など表記義務がないものなどもあります。
生活者が便利さばかりを求めれば、添加物は自ずと増えていくでしょう。

3つは「美味しさ」です。
様々な嗜好を考慮した上で購入する際の指標となるためのおいしさを確認します。
美味しさは、人それぞれの嗜好がありますから、決して評価することが目的ではありません。

「日本産」

――確かに、“自給率を上げましょう”と目標を掲げられても、私たち生活者はピンとこない部分があります。「日本産」であることを認定する意味の裏側には、そのよう意味があるのですね。

阪本:

日本産だから安心・安全だとは一概には言えません。
しかし真面目な国内生産者が、安価な輸入商品との価格競争に巻き込まれているのが現状です。
それらを知ってもらうきっかけとして「日本産」であることは、とても重要な要素となっています。

「安心」とは非常に抽象的なものですが、安全であることを前提として「愛情」をかけてつくることが大切だと考えます。
子ども達は、「愛情」に対してとても敏感です。食から受け取る愛情はとてもダイレクトであり、“ご馳走”が必要なのではなく、どれだけ“あなたのために愛情かけたもの”なのかを感じる能力を持っています。

――未来のことを考え、日本産を選ぶということはとても大事だと思います。また、子どもの性格や感情を形成する要素として、食が大切であることは言われていますね。「美味しさ」についてはどうでしょうか。

阪本:

美味しさに関しては、生活者がたくさんの商品の中から、商品を選ぶときの指標になることが目的です。
ですから、例えば生産者が目指す味と大きくかけ離れている表記があった場合には、生活者の声を届け改善を求めます。
また、コーヒーやワインなどにある苦みや酸味、辛口、甘口など、分かりやすい共通言語を用いたチャートの作成なども思案中です。

これらは、あくまで第三者的立場であり、商品を売ることを目的としない私たちだからこそ厳しくできる強みであると考えます。

食味審査会
食味審査会

――食の3重丸では、年に1回の食味審査会を開催しているそうですね。

阪本:

私たちが行う理化学検査に加え「味」の審査を、専門家だけでなく一般の皆さまに審査してもらっています。
大阪、名古屋、東京の3カ所で(各10名)一般公募者からランダムに選出し、認定商品のエントリー商品を審査していただきます。
おおよそ160種類ほどを試食するので、とても大変な作業となりますが、生活者の生の声を聞かせていただける価値のある審査会となっています。

――認定を受けている生産者からは、どのような声があがっていますか。

阪本:

阪本:「ブームはいらない。味をわかってくれる人たちに、しっかりと届けたい」と思いを持っている生産者がほとんどです。その商品の美味しさや魅力は、実際に食べてもらわなければ伝わりません。しかしながら、どれだけ良質な商品であったとしても「美味しいから、ぜひ食べてください」と、自身がアピールをすれば、宣伝文句のように聞こえてしまいがちです。そのため、「第三者が公平な立場で認定され、推奨してもらえることはありがたい」との声をいただいております。

また、家族経営のような小さな作り手は、商品の魅力を生産者に伝えるすべを持っていないことも少なくありません。そのような生産者に代わり生活者にご紹介していくのも、私たちの役目です。

目標
目標

――今後の活動について、目標などはありますか。

阪本:

認定を受けた生産者のためにも、この活動をもっと認知させていくことが必要だと考えています。
そのためにも、生活者と生産者をつなげるイベントなども開催していきたいと思います。
これまでも、生産者をお招きして味噌と糀を学ぶ勉強会や試食会や、会員さまと一緒に生産現場訪問などを開催してきました。
今後は、「3重丸クラブ」の会員さまの協力も得ながら、もっと情報を発信していきたいと思います。
「3重丸クラブ」は、ホームページからご登録していただければ、無料で誰でも会員になっていただくことが出来ます。
お得な特典・お役立ち情報などをお届けしていきます。

人は健康であるときには、食べることの大切さに気付きにくいものです。しかし、健康であるときにこそ、本当に良いものを選び、食べ、健康であり続けて欲しいと願っています。

生活者が利便性だけにとらわれるのではなく、良いものを選び買い支えることで、生産者の生活を守ることに繋がります。そして、それは自分や自分の大切な人の健康を守り続けることにも繋がっているのです。しかし、一つひとつの商品を品定めすることは、容易なことではありません。そんなときに「食の3重丸」を、ひとつの目安として活用していただけたら幸いです。

-文章・写真-

小高朋子

プロフィール

◎ライター・カメラマン:小高朋子

1982年、神奈川県生まれ。
持続可能なモノづくりの可能性を求めて各地を巡り、地域の食文化、工芸品、産業などを取材し、写真、映像も用いてその魅力を紹介している。
「商業界」「Aguri Journal」などにて執筆。2018年、商業界より出版の「おいしいものだけを売る・奇跡のスーパー「まるおか」の流儀」執筆を担当。
現在、サンケイリビング新聞社、毎日新聞経済プレミアにて連載

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この記事を書いた人

東京都出身。酉年生まれ。2児の父。趣味は読書と散歩と足のつぼ押し。
洗濯物をたたむのが苦手。煮豆と井上陽水が好き。